What's BBF? | BBFって何?
2004年、bozuでMini Hamburg Steakという名前でメニューに登場しましたが、アメリカではハンバーグというものが存在しません。ハンバーガーはご存じバンズで牛肉100%のパテを挟んだものですし、ご飯のおかずとしてのハンバーグというものの説明に苦しみました。そこでレシピ的にはミートローフかミートボールなのでミートボールと言い換えることにしました。
BBFでは以来、burg sauceにとどまらず、系列店用にすべてのソース類、ドレッシング、漬物から餃子、しゅうまい、ラーメンスープと多岐にわたり製造してきました。BBFが創業以来守り続けている事があります。それは化学調味料(アメリカではMSGと表記します)を使わない、ということです。素材のもつ特徴を程よく引き立ててくれる出汁とは違い、MSGは「うま味」というまやかしの言葉でそれ自体の味がどんな料理をも全部同じ味にしてしまいます。素材の品質をごまかす為の、製造コストを削減するがためのものでしかありません。食べると後味がだるく口の中が気持ち悪くなります。
更にBBFで作られる食品は商品として流通させるわけではなく、系列店でその週もしくは翌週に使う分だけを製造していましたので「保存料」という事には全く考えが及ばず、着色も野菜を使っていましたから自ずと完全無添加のものしか作っていませんでした。
ところが困ったことが起きました。マンハッタンにある、とある日系スーパーからお弁当とおにぎりを卸してほしいという依頼が来ました。向こうが希望するおにぎりの具の中で梅、明太子、高菜漬けが日本からの物で、全てに添加物が入っていることに気が付きました。商社に問い合わせても、アメリカに入ってきているもので無添加の明太子、高菜漬けはありませんとの事でした。梅干しは無添加のものが一種類だけあるが、一粒$1近くするとのこと。レストランと違って卸ですから粗利は薄利です。コストを抑えて省力化をしないと利益が出ません。輸入物を使えば安く手間もかかりませんが、ここでポリシーを変えるわけにはいきません。この話を断ろうか思案しておりました。
また時をほぼ同じくして問題が起きました。一番古い系列店bozuでは冷凍のシュウマイとたこ焼きを売っていました。シュウマイは蒸すだけ、たこ焼きは凍ったまま素揚げ、簡単で飛ぶように売れました。MSGが入ってないことを確認していましたが、ある日ふと気になりチェックしてみると、以前使っていた物と違うメーカーの物でした。キッチンのスタッフもただシュウマイ、たこ焼き、と注文するだけでブランドがいつ変わったかさえも知りませんでした。悪い予感があたってMSGが入っておりました。商社の答えはMSGが入ってないものはもう見つかりません、との事でした。スーパーのおにぎりとシュウマイとたこ焼き。私は非常に悩みました。悩んだ末決心をし、BBFのスタッフ宛に飛行機の中で文章を書きました。以下がそれです。
「皆さん、留守を守っていただきありがとうございます。
今回のbozu新メニューで添加物を含む人気商品、海老シュウマイとタコボールを取り除き、更に園さんに調査をお願いし、いくつかの添加物アイテムを除きました。
今後、シュウマイは園さんのレシピで手作りします。そして懸案であったスーパーの3つのおにぎりの具に関して、決断をしました 。
1、梅干しは無添加の物を使い、見合った値段にする。無添加梅干しと日本語で入れる
2、高菜炒めをやめ、手造り福神漬けをごま油と一味で炒めた物を代用します。
3、明太子は近い将来手造りしますがそれまでは提供しません。
もっと早くに私が方針を明確にしていなければなりませんでした。申し訳なく思っております。正直なところどこまで徹底出来るのか不安でした。これで経営が行き詰まり、みなさんに給料を払えなくなったらどうしようという葛藤がずっとありました。
しかし私が日本でやろうと決めていることは食を通して日本を強くする事です。今年3度目の帰国ですが、沢山の生産者の方達と繋がり、さらには無農薬野菜を推奨し活動する方達とも知り合えました。
手間のかかる有機栽培を庶民に手頃な値段で届けるには畑でコストがかかる分を、畑を出たあとの分で経費削減すれば良いという素人の私の安直な考えでしたが、実際に畑の後、つまりマーケティングと流通でコストを削減する動きが実際にあることを知りました。ついに国交省までもが、空いている高速バスのスペースに野菜を乗せる混載案に公に動き出しました。2年前に私が言った時にはほとんどの人が苦笑いでしたが、現実になろうとしています。
私の住む福岡では「グリーンコープふくおか」という企業が日本中の無農薬野菜を集め、醤油、みりん、酢、味噌、牛乳、明太子、蒲鉾、卵、生鮮あらゆるものに無添加の物を取り揃えております。同時にリサイクルを徹底しています。例えば牛乳の瓶、キャップも回収します。魚や肉を乗せている白のトレーや卵のパックも回収しています。そういった小さな努力で手間のかかる、本来なら高価な物を安価に庶民に届け、また消費者にも協力を呼びかけます。
食品添加物ワースト世界一のこの日本でもこういったいくつかの企業や団体、個人事業が本気で取り組んでいます。
私の中で日本での起業とアメリカでの経営を分けていました。心のどこかでアメリカだったら売れればいい、ニューヨークでは会社を存続させるだけで死に物狂いなのだから綺麗事より儲けて従業員にしっかり払えればそれでいい、と詭弁を使っていました。
しかし、食は金儲けの道具ではありません、麻薬を売って儲けるのとは訳が違います。麻薬を売って儲けたお金で慈善事業しても意味がありません。理念のない大手食品会社とは一線を引き私たちの立場をはっきりとさせます。
私の会社の企業理念を発表します。
「私たちは、飲食という立場から、安全で太陽の匂いのする大地の恵みを世界中の人々に届ける事で、本当の生きる喜びを喚起します。そして、食と仲間を通して人生の『味わい』をここで見つけます」
この理念を忘れずに私は日本で活動してまいります。ですからブルックリンで皆さんに頑張っていただいてエネルギーを送っていただきたいのです。どうかよろしくお願いします。
「鈴木 誠」
今年の春と夏にニューヨークで新しく二店舗出店します。一つは懐石のシェフとして11年連続でミシュランを獲得した園力(その ちから)さんを迎え入れ、割烹とカジュアルダイニングを複合させた店です。マックアンドチーズから懐石料理まですべて園シェフの創作料理です。店の名前をSONO CHIKARAにしようと提案しました。園さんとは10年来の友達で気心が知れています。酔っぱらって私が、その力を見せろ、と叫ぶのがお決まりでした。一から百までその力、ということです、と説明しました。すると幹部の数人が頭にBBFを入れたほうがいいと言います。一番それを主張したのが園さんです。BBFの理念というものを前面に出そうよ、と。
もう一店舗は川本さんというパートナーを迎え入れ広島お好み焼きをメインにした創作鉄板料理の店です。川本さんは20年以上前にニューヨークでは初めての日本人によるステーキレストランを成功させ一世を風靡しました。事情があって一線を退いていましたがもう一度勝負がしたいと、一緒にやってくれないかと話を持ち掛けられました。川本さんがやりたいというのが川本さんの故郷、広島の広島焼でした。広島焼きはご存じ、生地はクレープの様に薄くキャベツがてんこ盛りです。とっさに私の眼には、てんこ盛りのキャベツの中からシャントレーヌやポルチーニなどの木のこが飛び出し、横ではリブアイステーキのダイスカットがジュウジュウ言ってる映像が浮かんできました。これはインスタ映えだ、しかも素材を厳選した健康焼きだ、と。即、申し入れを快諾しました。
アイデアもよかったですが何よりも川本さんの熱い想いが素晴らしかった。「金儲けよりもみんなの幸せな顔が見たい」と。「お客さん、従業員、みんなが嬉しそうな店を作りたい。俺ももう初老だよ誠、子供もいないし女房と俺が食っていければいいんだ。」 泣きそうになっちゃいました。
店の名前はTeppanという事で一致してたのですが、川本さんがbbf sonoのネーミングのいきさつを知っていたらしく、BBF Teppanにしようと言ってきました。さらにはその理念を旗印にこれから出す、すべての店にBBFを付けたらいいいとおっしゃいます。
ニューヨークと日本を渡す架け橋としてBBFの旗印があればいいと思い、北出食堂パートナーのシゲにその話をしました。シゲも賛成してくれました。
申し訳ないですが庶民の食の安全に対する意識はアメリカの方が日本よりもはるかに高いです。コンビニに溢れかえる保存料漬けのお弁当に総菜。スーパーで買い物をする人は誰も裏の材料表示を見ずに安かろう良かろうでカゴに入れていく。野菜も見た目の奇麗さでしか判断基準がない現状。本物の自然の恵みを口にした時の身体が喜んでいる経験がないというのは、ややもすると心の病につながっていくのではないでしょうか。いじめや自殺、引きこもりにDV、偏執的な犯罪など、間違いなく食べ物が原因だと確信しています。
Brooklynという土地はアメリカの中でもPortlandと並んで意識の高い人たちが集まり暮らす場所です。Williamsburgは、そのBrooklynの中でもさらにそういった色合いが強い土地です。
BBFはBrooklynという場所から新たな日本食の在り方を、日本に向けて発信していきます。